2016年 05月 31日
カルチョフィ三昧 |
見事な広島産のカルチョフィがどっさり届いた。さて今週はカルチョフィを堪能することになりそう。カルチョフィとはイタリア名、広くはアーティチョークとして知られる食用のアザミのつぼみです。春から初夏にかけて出回るヴェネツィア人の大好物。もちろん私も大好き。ヴェネツィアでは、カストラウーレという一番摘みの蕾が特に珍重されます。もっと大きく育ったものは、まわりのトゲトゲしたガクをすっかり取り去って、その名も「フォンディ」(底という意)という芯の部分だけを贅沢に食べます。フォンディは八百屋の店先できれいに剥きとられて、あく抜きのためプカプカと水に浮かべて売っています。
初夏を迎えたヴェネツィアの市場では、ラグーナ内のサンテラズモ島で採れたカルチョフィが「nostrano」つまり自分たちの地元産であると誇らしげに山と積まれています。地方によって丸茹でや素揚げなどあるけれど、ヴェネツィアのマンマのリチェッタはしっとりとしたオイル煮。季節になるとたくさん買い込み、面倒な手間もかえりみず、せっせと作ってくれます。その味は、ユリ根のような空豆をもう少しほろ苦くしたような、何とも形容しがたい枯淡の風味。他に似た味がないだけに、一度好きになると病みつきになります。見た目もとても美的なカルチョフィは、古代から食べられてきたそうですが、これを初めて食べようと考えた人はエライですね。
〈ヴェネツィア風カルチョフィ〉
1)カルチョフィは大きさや状態にもよりますが、まず一番外側の固くて身のないガクと茎の部分を取り、さらに先の尖った部分(ここも身がついていない)を切り取る。レモン汁を入れた水に30分以上浸してアクを抜く。
2)きっちりと詰まった花ガクの間を広げてながら、プレッツェモロ(イタリアンパセリ)とニンニクのみじん切りを詰めこんでいく。
3)平鍋にカルチョフィを隙間なくきっちり並べ、ひたひたに水を注ぐ。さらにカップ1/2くらいのオリーブオイルを回しかける。軽く塩胡椒して火にかけ、蒸し煮にする。大きさや個数にもよりますが、だいたい40〜50分。途中水分が減ってきたら、少し水を足す。串でさっと通るくらい柔らかく煮えたら出来上がり。そのまま煮汁に浸して冷まします。
さて、この丸ごと煮たカルチョフィの食べ方です。まずは外側の花ガクを1枚ずつはがして、根元の部分を歯でしごいて食べていきます。だんだん中心に近づくにつれて丸い芯のかたちになってきます。上に生えたもしゃもしゃした蕊の部分は食べません。すっぽり取り除くと平たい花托部分フォンディがあらわれます。ここは丸ごと食べられる最後のお楽しみ。ゆっくりしみじみ味わいます。カルチョフィは、そのアク故に合わせるワインが難しいと言われています。マンマによれば、辛口の赤ワインと合わせ、渋みの後に追いかけるようにやって来る、ほのかな甘味を味わうのだそう。いずれにせよ、カルチョフィを食べ始めると、皆その作業に集中し寡黙になる。そこが「野菜界の毛蟹」と(私が勝手に)名づけた所以です。
by tencovenexiana
| 2016-05-31 00:03
| 料理/cucina