2010年 10月 15日
BUONA PASSEGGIATA |
最もヴェネツィア的なひとときといえば、それは間違いなく夕方のパッセジャータの時間。passeggiata というのは「歩き」という意味で、散歩というのとはちょっとニュアンスを異にする日常的なぶらぶら町歩きのことだ。イタリア人の多くは「毎日が同じ」な、そして地元密着型の暮らしこそ快適だと感じているという。とりわけ箱庭のように閉じた環境のヴェネツィアでは、人々の行動範囲も自ずと限られていて自然発生的なテリトリーみたいなものがある。通勤や遠出の買い物は別として、ふだんの生活圏はおよそ半径1キロほど。つまりすべて歩いていける範囲ということだ。なにしろヴェネツィアでは公共交通の水上バス以外は歩くしかないのだ。誰も彼もが歩いているヴェネツィアでは、当然のことながら、道で顔見知りと出会う確率が非常に高い。とくに夕方のパッセジャータは、住人たちにとって重要な日課。皆毎日時計のように同じ時刻に出かけるので、約束したわけでもないのに、だいたい同じ顔ぶれに出会う。すると互いに「ブオナ・セラ!」「ブオナ・パッセジャータ!」と声をかけあってそのまま立ち話に突入することも多く、そんな人たちが路上のあちこちに集っている。さらには、いきつけのバールに場所を変え、アペリティーヴォを飲みながら本格的にお喋りに花を咲かせることも。つまり夕方のパッセジャータは路上の社交場なのだ。だから、ほんの近所だからといってサンダル履きにエプロンをつけたままなんてことは決してしない。シニョーラなら、ちゃんとお化粧をしてアクセサリーもつけ、ちょっとおしゃれして出かける。シニョーレだってぱりっとしたシャツやジャッカを着用。新しく買った服を見せびらかしたり、ウィンドウショッピングをするのもこの時である。夕餉の買い物ついでに、気になっている店のウィンドウもチェックしておくのだ。例えば新しい下着ひとつ買うのにも、何度かウィンドウで確かめ、他の店も比較検討して納得した上で、やっと中に入って品物を出してもらうといった具合。
*夕暮れのグーリエ橋から見たサン・レオナルド通り。

*路上の立ち話に花を咲かせる人々。食料品店RIZZOの前も人気?のポイント


*サンドラの家からサン・レオナルドを見下ろす。ふだんのヴェネツィア、冬の日暮れ時

*バールでのアペリティーヴォの定番はスプリッツ。私はアペロール、マンマはカンパリ派。イサオ君はチナール。
短期滞在が常の私たちも、しばしのヴェネツィア暮らしの間はこのパッセジャータが何よりの楽しみ。日中どこかへ出かけていても、夕方の定時になると、いつもの道筋をたどりながら家へ戻ることにしている。数年来通ううち、私たちにもなじみの店やバールがいくつかできたし、路上で知りあいに声をかけられるようになった。やはり同じ時間にやって来たマンマ(パパがいた頃はもちろんいつも連れ立って)と出会い、合流することもしばしば。マンマと一緒ならバールでの一杯、アペリティーヴォも尚楽しい。おきまりのスプリッツを頼み、食べ放題のパタティーナ(ポテトチップス)やノチ・アメリカーネ(ピーナッツ)をぱりぱり。もうひきあげようと思っているところへ、ご近所の常連が入ってきて、またひとしきりお喋りとなってしまう。誰もがささやかではあるけれど充実したこのひとときを生き生きと過ごしている。大切な一日をパッセジャータでしめくくるヴェネツィアの人たちは、やはり人生の楽しみが何であるかをよく知っているのだろう。
*今は亡きパパ、ヴィットリオも一緒のパッセジャータ。人は変われど町は変わらない。2001年初夏。

2001年のイタリア年の記念サイトに連載していた記事「ヴェネツィア的生活実践編」はこちらから

短期滞在が常の私たちも、しばしのヴェネツィア暮らしの間はこのパッセジャータが何よりの楽しみ。日中どこかへ出かけていても、夕方の定時になると、いつもの道筋をたどりながら家へ戻ることにしている。数年来通ううち、私たちにもなじみの店やバールがいくつかできたし、路上で知りあいに声をかけられるようになった。やはり同じ時間にやって来たマンマ(パパがいた頃はもちろんいつも連れ立って)と出会い、合流することもしばしば。マンマと一緒ならバールでの一杯、アペリティーヴォも尚楽しい。おきまりのスプリッツを頼み、食べ放題のパタティーナ(ポテトチップス)やノチ・アメリカーネ(ピーナッツ)をぱりぱり。もうひきあげようと思っているところへ、ご近所の常連が入ってきて、またひとしきりお喋りとなってしまう。誰もがささやかではあるけれど充実したこのひとときを生き生きと過ごしている。大切な一日をパッセジャータでしめくくるヴェネツィアの人たちは、やはり人生の楽しみが何であるかをよく知っているのだろう。
*今は亡きパパ、ヴィットリオも一緒のパッセジャータ。人は変われど町は変わらない。2001年初夏。

2001年のイタリア年の記念サイトに連載していた記事「ヴェネツィア的生活実践編」はこちらから
by tencovenexiana
| 2010-10-15 18:10
| venezia
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