2010年 10月 17日
ヴェネツィア生活作法 |
*リアルト橋からの冬の夕景。
ヴェネツィアに通うこと十数年、当然ながらマンマをはじめご近所の知合いも皆それなりの年齢に達している。女性の方が平均寿命が長いのはいずこも同じで、気がつけばまわりは年配のシニョーラ、それも未亡人VEDOVAばっかりという状況。とはいえ彼女たちの暮らしぶりは活動的で、特に人一倍面倒見のいいマンマなどはけっこう忙しい。見習わなくてはと思うのは、私たちが居候する間もマンマはその生活のペースを変えることがないところ。規則正しい生活を送る目安は、ほぼ毎日決まった時間のパッセジャータといきつけのバールでのお喋り。そうでなくとも誰彼となく電話をかけ合い、ついでの買い物や用足しを頼んだり、病院への付添やおすそ分けなどなど互いに助け合っている。週に一度、火曜の午後はカード遊びと決まっていて、茶菓子を持寄りお喋りとカードに興じる。どこであろうとシニョーラたちのお喋りはとどまるところをしらない。はじめの頃はその互いに歯に衣きせぬ物言いに驚きもしたけれど、これが彼女たち独特の社交術であり元気の源でもあるようだ。そしてそこにちゃんとルールがあることも分かってきた。例えば毎日顔を合わせてバールでアペリティーヴォしていても長居はしない。そのままずるずる一緒に食事をすることは滅多にない。暗黙のうちに引け時があって、それぞれ家や近くに住む息子や娘の家へと戻っていく。カード遊びも飲み食いはお茶だけ、夕食前には切り上げるのが決まりだ。一緒に食事をするときは前もってきちんと約束をして招きあう。皆似たり寄ったりの年齢なのに、たとえ1歳でも年上の相手に対しては家まで送っていったり、届けものをしたりときちっと手厚く扱う。ぶつぶつ文句をいいながらでも頼まれたことは必ず引き受ける。逆にいうと頼まれもしないことには手出しをしない。面倒見はいいが、お節介ではないのだ。互いの領分を侵害することなく気分よくつきあえるよう、一定の線を守っている感じだ。仲が良いということと四六時中ベタベタすることは別なのだ。これもまた古くから続くコミュニティーを持った都市生活者、ヴェネツィア人が身につけてきた生活作法なのかもしれない。
*マンマといつものお仲間たちとお出かけ。ヴァポレットの停留所で。
*シニョーラたちのたまり場のバール。イサオ君もここではラガッツォ扱い。
*マンマ、ルチアーナと一緒に。
by tencovenexiana
| 2010-10-17 14:10
| venezia