2010年 11月 11日
旅する日々 |
*記憶に残る旅の時間は何でもない瞬間だったりする。ヴェネツィアのバールにて。
仕事を片づけながら、旅の準備。行こうと思い立ったときから旅は始まると思っているので、つまりチケットを探し始めた時が旅の始まりです。昔と違って今は何もかもネット上ですみ、だいぶ旅支度も様子が変わりました。ローカルの交通手段を調べたり、時刻表も簡単にチェックできて便利です。その昔は旅行代理店と交渉しまくり、ガイドブックやトーマスクックの時刻表と首っぴき、ホテル探しもひと苦労で、そりゃあ大変でしたが。
バブルはなやかりし80年代、友人のKちゃんとは仕事も遊びもいつも一緒でした。私たちには常に誇大妄想的な計画があり、それを発表しあっては盛り上がっていたっけ。ニューヨークやパリやロンドンとよく一緒に旅もして、あっちこっちで珍道中を繰り広げたものでした。若さゆえか、ふたりでいると妙な度胸が湧いて怖いもの知らず。武者修行のようなつもりで好奇心の赴くまま、美術館やギャラリーはもちろん、オペラやバレエやダンスやコンサート、クラブや高級ホテルやレストラン等々---いろんなところへ出かけてはいつも腰抜かすほど感動していました。あれほど感動を共有できる友に出会えたことは驚異というべきで、その頃のたくさんの感動や経験が今の私のベースになっていると思っています。1983年に私たちはそれまで出会った西洋美術へのファンキーなオマージュというか、女子宇宙的解釈によるパロディというか、おもちゃ箱をひっくりかえしたようなキッチュでど派手、ハッピーな展覧会をしました。それは私たちなりのアートによるロックンロールだったのかもしれません。この展覧会はいろんな意味でひとつの契機にもなりました。私たちは事務所をつくり、ユニットとしてアーティスティックな仕事を始めたのです。またその時偶然ギャラリーを訪れたJ・P・ゴルティエ氏との出会いが、私をパリへとつなぐ人脈の端緒となり、それがひいては後にヴェネツィアまでつながることになるのだから、人の縁とはまったくもって不思議としかいいようがありません。Kちゃんとはバブル真っ盛りの約10年間駆け抜けるように仕事をした後、彼女はロンドンに移り住むことになり、そこでガーデニングの世界と巡り会い、人生のあらたなステージを迎えることになります。私といえば、いつか住むかもしれないと思っていたパリで、撮影の仕事をきっかけにヴェネツィア人のカメラマンと知りあうことになり、パリからイタリアそしてヴェネツィアへと導かれていきました。運命といってしまえばそれまでですが、きっとこうなるべきエネルギーのような力がはたらいて、それぞれの道が拓けていったという気がしています。旅も日常のひとつのかたち、と思うと私たちはずっと旅を続けているのかもしれません。
*ROSE NIPPONとタイトルされた展覧会の記事。フランス「20ans」誌に載りました。ギャルだったわたしたち!!
Kちゃんはその後ヴィジュアル系ガーデンデザイナーとして才能を発揮、いまやカリスマ的存在です。昔から美しいものへのこだわりが飛び抜けていたKちゃんの感性が文字通り花開いているのを見るのは、友人として誇らしく、またとても愉しい。先日、彼女のブログで紹介してもらってから、私のブログにも多くの皆さんが来てくれました。GRAZIE MILLE!!これからもよろしくお願いいたします。
by tencovenexiana
| 2010-11-11 11:11
| 日記/vita giornale