2011年 06月 07日
VONGOLEかCAPAROZZOIか |
※たまにはこんな典型的なヴェネツィアの写真もいいかな。
Facebookでコメントをやりとりさせていただいているフィレンツェ在住のI夫妻が、取材でヴェネツィアに滞在中とのこと。まだまだヴェネツィア行きが叶いそうもない私にとって、リアルタイムのヴェネツィア便りは楽しくも、うらやましい限りです。先日Bacaro(ヴェネツィアの居酒屋)からのコメントに続き、北岸にあるトラットリアからのシズル感溢れるパスタの皿の写真がアップされていました。そこは私もサン・ミケーレ島へ(パパ・ヴィットリオの)お墓参りの後に、時々立ち寄るものの、アペリティーヴォするだけでまだ料理を試したことのない店。I氏がアップしたのは、ムール貝とアサリのスパゲッティで、なかなか旨そうでありました。ヴォンゴレのスパゲッティって、たぶん日本人が一番よく知っているパスタのひとつじゃないでしょうか。そしてSpaghetti alle vongoleはイカスミのスパゲッティと並んで、ヴェネツィアのトラットリアやレストランのメニューに必ずのっている代表的なプリモピアット、もちろん私も大好きです。けれども実は私、アサリのスパゲッティを店で食べたことはあっても、ヴェネツィアの家で食べたことがないのです。何故なら、生粋のヴェネツィアっ子であるマンマにとって、アサリのスパゲッティはあくまでもツーリストメニュー。食べるどころか作る気すらないのです。では、ヴェネツィアっ子はアサリはどう食べるかって?それは、チケッティ(ヴェネツィア風酒肴&前菜のこと)としてシンプルこの上ないレモン蒸し煮にするか、プリモなら100%リゾットで決まり。アサリ自体は大好物なのですから、その頑固さはなかなかのもので決して譲る気はないようです。
※北岸のフォンダメンタからサン・ミケーレ島を臨む。
ヴェネツィアでアサリといえばVongole veraci(純正ヴォンゴレ)といわれ、貝類の中でもちょっと高価であり、日本のように手軽にスーパーで手に入るというようなものではありません。しかもラグーナで採れる地物のアサリは、春の産卵期には毒をもつということから(牡蠣のように)食べられる時期も限定され、珍重されています。なので、リアルトの魚市場でたまにアサリを見かけると「おっ、今日はアサリがあるな。じゃあ、ちょっと奮発して買ってみるか」ということになるわけ。さて、ここまでアサリのことを、いわゆるイタリア語のヴォンゴレと説明してきましたが、ヴェネツィア人はふつうこれを方言でカパロッソイCaparosoliとかカパロッツォイCaparozzoiとか呼んでいます。イタリアはどこへ行っても方言中心主義ですが、特にヴェネツィア弁は特殊な言葉として有名であり、そのなかでも食材の名前についてはイタリア屈指のユニークさです。例えば、ムール貝はコッツェ→ペオチ、シャコはチカーレ→カノーチェ、ウナギはアングイラ→ビサート、カタツムリはキオッチョリ→ボヴォロ、ソーセージはサルシッチャ→ルガネガ、ピーナッツはノチ・アメリカーネ→バジジ、などなどきりがありません。ヴェネツィアで地元住民が行くような店で(ありきたりのツーリストメニューではなく)おいしいものを食べようと思ったら、こうしたヴェネツィア弁の食材の名前をいくつか頭に入れておくといいですね。
I氏の写真にすっかり刺激された私は、マンマがいうところのツーリストメニューであるアサリのスパゲッティがどうしても食べたくなってしまいました。ヴェネツィア風といえば、唐辛子とニンニク、そしてレモンをきかせるのが特徴です。この日はイサオ君がリングイネで作ってくれました。ワインはちゃんと冷えたピノ・グリージョをあわせて。お味はもちろん最高に美味。しばしヴェネツィアのラグーナに切ない思いを馳せたのでした。
by tencovenexiana
| 2011-06-07 00:06
| venezia