2016年 05月 19日
ヴェネツィア案内、私の好きな場所 |
この約2年間、母の介護生活と看取りのため実家暮らしでした。
そのために20年来通い続けていたヴェネツィアに、はじめて2年以上行かないというブランクとなりました。また、なんということか、私のヴェネツィアのマンマも昨年2015年5月に急逝し、私はいっぺんにふたりのマンマを失うことになりました。
今年になって東京の自宅に戻り、私自身も色々な意味で生活復帰のリハビリ中だと思っています。ブログの方もほぼ2年間更新しないままでした。実は今回たまたまヴェネツィアに行くという数人の友人のリクエストに応じてヴェネツィア情報をまとめることがあり、ブログ再開のきっかけになりました。しみじみと昔の写真を眺めたりしているうちに、すぐにでもヴェネツィアに飛んでいきたくなりました。
私にとってヴェネツィアは特別な場所です。不思議な縁で導かれるようにして、友人の両親であるパパとマンマに出会いました。とりわけマンマのロージィに出会ったことが私の人生を大きく変えることになりました。本当の豊かさ、生活の質とは何か、そして美意識を持って誇り高く生きる人々は、都市型スローライフの手本です。
2000年にはつき動かされる思いで「ヴェネツィア的生活」(マガジンハウス刊)という本を書きました。
3.11以降、その意味をいっそう強く問いかける日々となったのです。
さらに前のアーカイブとなるホームページ
ヴェネツィアの情報はガイドブックやネット上に溢れています。この頃の懇切な情報はすべてにリンクがはられていて、口コミも満載、驚くべきことにgoogleのストリートビューで道順もバーチャルでなぞれるし、店の中まで覗けたりもします。
私にとってのヴェネツィアは世界に冠たる観光都市という表の顔ではなく、
そこで暮らす人々の生活に触れる、素顔の部分。
ここではまずヴェネツィア滞在中におさえておくべきポイントをいくつか紹介します。
□水上バスVapolettoなどの交通手段
ヴェネツィアの公共交通はすべて船、運河をゆくヴァポレットと島の外側や島々を結ぶ高速船モトスカーフォ、湾内をゆく大型船モトナーヴェ、それに本土と湾内を巡るアリラグーナなどがあります。ただし、ツーリスト用はひどく運賃が高いので要注意。うっかりチケットやパスカードを持たずに乗ってしまうとものすごい罰金をとられるのでこれまた注意。
ヴェネツィアの醍醐味はpasseggiataといわれる町歩き。歩いてカバーできる等身大のエリアなので、まずは徒歩をおすすめします。
ヴェネツィアの公共交通サイト
□宿泊は必ず本島内で。対岸の本土周辺にもリーズナブルなホテルやairb&bなどの物件もがたくさんあるようですが、ヴェネツィアの本島に滞在し、その空気に浸ることが何より大事です。島内もいくつかのエリアに分かれていて、何処に居るかでかなり印象が変わります。観光の中心であるサンマルコ地区は物価も高く、ツーリストだらけで騒がしいので避けたほうがよいでしょう。cannaregioやsan poloなどの地元住民の生活圏に近い地区がおすすめです。他の都市に比べて治安はよいほうですが、スリやぼったくりや路上のインチキ商売は山ほどいますので、気をつけましょう。特に駅や空港など、外へ逃げ道が開いている場所は注意が必要です。
□いつも家でマンマの料理を食べることが第一の目的だったので、実はそんなに外食事情に詳しくない。ヴェネツィアには独特の酒飲み文化があり、バーカロといわれるヴェネツィアならではの居酒屋が秀逸。より本格的な食事を出すところはオステリアとよばれるが、その区別は曖昧。いずれもチケッティというつまみやヴェネツィア伝統料理、地酒のワインも楽しめる。探検気分ではしごしてみるのも楽しい。また、トラメッツィーニといういわゆるサンドウィッチのバリエーションが豊富で、バールでの小腹ふさぎ、街歩きの途中の軽食としてもぴったり。
ヴェネツィアの食べ物屋はど概ね路地のどん詰まりにあったりする、見つけにくい、古ぼけた小さい店ばかりです。逆にサンマルコに近かったり、大通りに面した(呼び込みなどのいる)大型店は要注意です。観光客をカモにするぼったくりも多く、ヴェネツィアでよいレストランを見つけるのは至難の技。やっぱりどこで食べてもジェラートが旨い。ジェラートやカフェの値段もサンマルコとの距離に比例して上がっていきます。
□リアルトの市場には必ず行くこと。ネオ・ゴシックの建物も風格があって美しい。
魚市場、野菜市場、周辺には食関連の店やバール、バーカロがたくさんあります。
午前中~昼までが賑わいます。ヴァポレットでも行けますが、大運河の対岸のS.Sofiaから渡し船traghettoがあるので、それに乗るのも一興です。格安でゴンドラ気分が楽しめます。
□美術館も、ガレリア・アカデミアやドゥカーレ宮殿、コッレール美術館、などはまずはおさえておくべき名所です。団体ツアーの旅程ではヴェネツィアはせいぜい1〜2泊どまりなので、美術館巡りをする暇がないらしく、行列ができて混み合うようなことは滅多にありません。展示室は意外と空いていて、ゆっくり観ることができます。AccademiaではCarpaccio(カルパッチョという料理名の由来となったヴェネツィア派の画家)の展示室を見逃さないように。
また、美術鑑賞するにはギリシア神話やキリスト教の基礎知識、を身につけておくと俄然面白さが違います。イコノグラフィア、図像学という知識です。その他、個人的にはあまり好きな場所ではありませんが、コンテンポラリーアートに興味があるのなら、一応話のタネ的名所としてPUNTA DELLA DOGANAやPALAZZO GRASSIも。BIENNALEの季節ならもちろんアルセナーレとジャルディーニの会場も一見の価値ありです。2016年は建築ビエンナーレです。
□ヴェネツィアといえばヴィヴァルディなどバロック音楽が有名。私もヴェネツィアのパラッツォで開かれるコンチェルトで古楽に目覚めました。そして、もうひとつヴェネツィアならではの「音楽」はサウンドスケープ、環境音です。自動車の騒音のないことが、この町の世界でも希有な環境をつくりだしています。水際の音、船の音や鳥の声。カンパニーレの鐘の音。ゴンドリエレのかけ声や路上で立ち話する人々の挨拶さえも音楽のように聞こえます。
ヴェネツィアには多くの島があり、ガラスで有名なムラーノ、カラフルな町並みとレース細工のブラーノ、墓地の島サンミケーレ、映画祭で有名なリドなどありますが、私はアッティラの遺跡があるトルチェッロが好きです。
とまあ、ヴェネツィアはどこを切り取っても絵になってしまうわけですが、逆にいうといわゆる観光地の風景そのもの、絵はがきのようになってしまう。サンマルコや大運河などの有名すぎる場所も、早朝や夕暮れ、深夜などの時間帯はまた別の表情をみせてくれます。
カンナレッジョのかつてのユダヤ居住区GHETTOゲットーや北岸FONDAMENTA NUOVEの眺めもいいーーとまあ、キリがないのです。
あとはとにかくたくさん歩いて、道に迷って、自分だけのお気に入りの場所を見つけて下さい。
by tencovenexiana
| 2016-05-19 19:28
| ヴェネツィア/venezia