2017年 01月 26日
LA TAVOLA GIORNALE 日々の食卓 |
HP掲載のテキストよりのアーカイブシリーズです。
2011年の年末に考えたこと、丸5年が経った今も同じ気持ちです。
ヴェネツィアのマンマを見送った今、さらにその思いは強くなっているかもしれません。
LA TAVOLA GIORNALE (2011年のGAZZETTA TENCOより
今年は時間の流れ方がぎくしゃくしている。今まで誰も経験したことのない状況のなか、
目前の現実にいつも追われるような日々を過ごし、気がつけばブログを始めて1年が経っていました。
それまでもヴェネツィア的生活を標榜し、その自然のリズムと共存した都市型スローライフを東京でも実践してきたけれど、わたしにとって特別な場所であるヴェネツィアや、そこで暮らす人々のことをもっと多くの方に伝えたい、共有したいと思って始めたブログ。
この1年を振り返ってみると、それは私自身の生活をあらためて見直す作業だったように思えます。
3月のあの日以来、わたしたちの日常は位相を変えたものになってしまいました。
自分にとって大切なものは何か、人生の優先順位もはっきり意識するようになり、生活時間の配分も変わりました。一日を大切に生きていこうという気持ちはいっそう強くなり、家族や大切な人と過ごす時間はより濃密なものになりました。そして、自分らしく生きるということも考えずにはいられません。
私にとって「自分らしくいること」のためにはいくつか守るべきことがありますが、その筆頭が毎日の食事です。日々自分と誰かのためにごはんを作り、食卓を囲むことの大切さはヴェネツィアのマンマに出会って、さらに確信することになりました。
先日、日本最高齢96歳の現役女性カメラマンの方が、テレビ番組の取材に応じ「お元気でいる秘訣は?」という問いに「いつ誰に見られても恥ずかしくない食事」とお答えになっているのを見て、激しく共感。それは食事の内容はもちろん、食べることへの真摯さこそが生活を形づくる大切な態度だということなのでしょう。Facebookでも、せっせと日記のように料理したものをアップ。自分の生活を客観的に俯瞰してみる、まさしく「いつ誰に見られても恥ずかしくない食事」をこころがけるための有効活用法と思っています。
よく「どうしてそんなに毎日ちゃんとごはんが作れるの」と感心されますが、逆にいうと毎日続けるからこそできるのだと思います。材料もエネルギーもローテーションを組んで考えていけば、効率よくできるのです。
なにより、わたしらしくいるための自己表現のひとつでもあるのですから、おろそかにはできません。震災以降、この気持ちは一日を大切に生きようという思いと重なり、かなり意識して食事作りに向かっています。様々な方が、わたしの料理に何かを感じてメッセージを下さることも増えてきました。
小さなエネルギーで創造的に暮らすこと、つまりそれが都市型スローライフ「ヴェネツィア的生活」なわけですが、わたし自身が身をもって日々実践し、そのたしかさを証明していこうと思っています。
5年前までの2~3年の間、不定期にレシピつき食事会を行っていましたが、忙しさに追われ中断していました。自分にできることと、人生の時間を量りにかけると、もうあまり猶予はないのかもしれません。そのなかで、あらためて食べることについて向き合い、そしてひとりでも多くの人と共有したいと思っています。
わたしがヴェネツィアのマンマの料理と生き方に触発されたように、誰かがわたしのヴェネツィア的生活に共感を抱いていただけたらと思います。
やや大げさにいえば、それがわたしが自分のスキルを生かしてできる社会的貢献なのではと感じています。
by tencovenexiana
| 2017-01-26 17:31
| cucina