2018年 02月 18日
聖なる色 |

近視眼的な流れ作業で黙々と手を動かしていると、雑念が取り払われ、対象物に意識が集中し、編みものや刺繍などの手工芸がそうであるように一種の瞑想状態に陥る。心地よい瞑想は中毒性を伴うものらしく、オブジェ作りはあともうひとつもうひとつと、手が止まらなくなる。オブジェを作り続ける1ヶ月半余りの間、自分の中でプリミティブ期から最盛期、そして自己模倣のマニエリスムまでの様式の変化を辿ったことは興味深い体験になった。そうやって日がなアトリエで装飾と文様の世界に没頭していると、技法は全く異なるものの、何世紀もの時空を超えて当時のイコン制作者たちの心情を追体験しているような気持ちになってくる。
文字通りに血肉を表す赤色、理性と純潔を表す青色、全てを包み込み神性を与える黄金色。聖なる色に宿る秘密を皮膚感覚で感じとっている。
ビザンチン美術の制作者は現代的な意味のアーティストではなく、宗教的使命を帯びた職人たちだ。制作は祈りなのだという思いを共有する日々を過ごしている。





by tencovenexiana
| 2018-02-18 10:36
| アート/VOX ANGELICA